2011年6月23日に、メディカル テクノロジーEXPOで講演をすることになりました。
http://www.medi-techno.jp/ja/seminar/04/
医療機器開発にかかわる人たちに、医療現場のニーズを伝えられたらと思います。
日本の、ものつくりのスピリットが、患者さんの治療に役立てば意義深いことだと思います。
2011年6月3日金曜日
2011年5月29日日曜日
鼡径ヘルニアの治療方針
最近の鼠径ヘルニアに対する治療方針をご紹介します。
この3年ほどはLichtenstein法を中心に200例以上の患者さんに手術をしてきました。
その治療成績はとてもよく、今後もLichtenstein法を続けていきます。
今年の1月からは新しい手術方法を取り入れています。
それは腹腔鏡による鼠径ヘルニアの手術です。
TEP(Totally extraperitoneal (TEP) endoscopic hernia repair)という方法です。
現在は両側鼠径ヘルニアの患者さんに限定して行っています。
この手術のメリットは下腹部の真ん中の3センチのキズだけで
両側のヘルニアが手術できるということです。
しかも麻酔法は局所麻酔で、ご高齢の型でも安心して手術が受けられます。
既に10数例の患者さんに手術を行いましたが、みなさん経過は順調であり、
徐々に適応を広げていくことを考えています。
この3年ほどはLichtenstein法を中心に200例以上の患者さんに手術をしてきました。
その治療成績はとてもよく、今後もLichtenstein法を続けていきます。
今年の1月からは新しい手術方法を取り入れています。
それは腹腔鏡による鼠径ヘルニアの手術です。
TEP(Totally extraperitoneal (TEP) endoscopic hernia repair)という方法です。
現在は両側鼠径ヘルニアの患者さんに限定して行っています。
この手術のメリットは下腹部の真ん中の3センチのキズだけで
両側のヘルニアが手術できるということです。
しかも麻酔法は局所麻酔で、ご高齢の型でも安心して手術が受けられます。
既に10数例の患者さんに手術を行いましたが、みなさん経過は順調であり、
徐々に適応を広げていくことを考えています。
NOTES実施!
5月16日のブログでNOTESのご案内をいたしました。
早速、この新しい手術を行う機会があり、無事成功しすることができました。
おへそに5ミリと2ミリの細い管(トロッカー)を遠し、腟には12ミリのトロッカーを1本おいて、
虫垂を切除する手術(俗にいう盲腸の手術)を行ったのです。
おへそには細い管を2本おいただけなので、キズはほとんどわかりません。
切除した虫垂は腟から取り出しました。
おへその痛みは、通常の単孔式手術に比べ格段に少なく、
硬膜外麻酔なしでも痛み止めは必要ありませんでした。
また腟にはまったく痛みを感じないとのことでした。
患者さんにとって予想以上のメリットがあると実感できる結果となりました。
今後、患者さんとよくお話ししてご理解が得られたら、さらに症例を重ねていきたいと思います。
もちろんSafety First(安全第一)でいくという基本だけは崩さずにいきます。
早速、この新しい手術を行う機会があり、無事成功しすることができました。
おへそに5ミリと2ミリの細い管(トロッカー)を遠し、腟には12ミリのトロッカーを1本おいて、
虫垂を切除する手術(俗にいう盲腸の手術)を行ったのです。
おへそには細い管を2本おいただけなので、キズはほとんどわかりません。
切除した虫垂は腟から取り出しました。
おへその痛みは、通常の単孔式手術に比べ格段に少なく、
硬膜外麻酔なしでも痛み止めは必要ありませんでした。
また腟にはまったく痛みを感じないとのことでした。
患者さんにとって予想以上のメリットがあると実感できる結果となりました。
今後、患者さんとよくお話ししてご理解が得られたら、さらに症例を重ねていきたいと思います。
もちろんSafety First(安全第一)でいくという基本だけは崩さずにいきます。
2011年5月16日月曜日
NOTESをご希望の患者さんへ
NOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)という新しい画期的な手術のご紹介を以前このブログにご紹介しました。
http://wada-md.blogspot.com/2009/08/notes.html
私たちはこれまで動物を用いた研究でNOTESの安全性と有用性を確認してきました。
また最近ドイツでは、腟とおへその両方から手術を器具を挿入する術式が開発され、既に1000例以上の患者さんで実施されています。
そこで我々もこのドイツの術式に準じた手術方法を採用することにして準備を進めています。
既に当院産婦人科と共同の手術で、同様の手術に成功しています。
この度、当院の倫理委員会の承認がおりましたので、いよいよ患者さんの同意が得られれば、この新しい手術を実施したいと考えています。
患者さんのメリットは、体表に傷がないことです。
現在、単孔式内視鏡外科手術という、おへそだけの傷で手術を行う方法が広く行われていますが、臍部に2~3センチの傷ができるため、臍部の変形や若干のキズのはみ出しが懸念されます。
しかし、今回我々が行う術式はおへそに5mmの管を2本差し込むだけなので、さらに傷は目立たず、痛みも軽減することが期待されます。
なぜ傷が小さくてすむかというと、腟から臓器を摘出するからです。
腟の傷は、当然のことながら体表から見えません。また皮膚に比べて痛みが少ないとされます。
これは患者さんにとって大きなメリットになるといえます。
将来的には適応範囲を広げていくことも検討していますが、現在、対象とする患者さんは、閉経後の女性に限っています。
対象となる疾患は、
・胆石症や胆のうポリープに対する腹腔鏡下胆嚢摘出術
・胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下胃局所切除術
・急性虫垂炎に対する腹腔鏡下虫垂切除術
・腹腔内疾患に対する腹腔鏡下臓器生検
・その他の腹部疾患に対する比較的容易な腹腔鏡下手術
としています。
この術式について詳しくお知りになりたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
http://wada-md.blogspot.com/2009/08/notes.html
私たちはこれまで動物を用いた研究でNOTESの安全性と有用性を確認してきました。
また最近ドイツでは、腟とおへその両方から手術を器具を挿入する術式が開発され、既に1000例以上の患者さんで実施されています。
そこで我々もこのドイツの術式に準じた手術方法を採用することにして準備を進めています。
既に当院産婦人科と共同の手術で、同様の手術に成功しています。
この度、当院の倫理委員会の承認がおりましたので、いよいよ患者さんの同意が得られれば、この新しい手術を実施したいと考えています。
患者さんのメリットは、体表に傷がないことです。
現在、単孔式内視鏡外科手術という、おへそだけの傷で手術を行う方法が広く行われていますが、臍部に2~3センチの傷ができるため、臍部の変形や若干のキズのはみ出しが懸念されます。
しかし、今回我々が行う術式はおへそに5mmの管を2本差し込むだけなので、さらに傷は目立たず、痛みも軽減することが期待されます。
なぜ傷が小さくてすむかというと、腟から臓器を摘出するからです。
腟の傷は、当然のことながら体表から見えません。また皮膚に比べて痛みが少ないとされます。
これは患者さんにとって大きなメリットになるといえます。
将来的には適応範囲を広げていくことも検討していますが、現在、対象とする患者さんは、閉経後の女性に限っています。
対象となる疾患は、
・胆石症や胆のうポリープに対する腹腔鏡下胆嚢摘出術
・胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下胃局所切除術
・急性虫垂炎に対する腹腔鏡下虫垂切除術
・腹腔内疾患に対する腹腔鏡下臓器生検
・その他の腹部疾患に対する比較的容易な腹腔鏡下手術
としています。
この術式について詳しくお知りになりたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
2011年3月6日日曜日
患者さんのご家族からメール
「きみが外科医になる日」
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062165767.html
を読んで下さったとのことで、その感想をお知らせいただきました。
ご尊父様が当院で胃切除を受けられたそうです。
≪以下引用≫
先生達は沢山の患者さんに手術をしているので、流れ作業のように
手術をこなしているだけかと思いましたが、「休日でもいつも患者さんが
気になる」等々を読んで、患者さんに対して先生達はそこまで親身に
思ってくださっているのだと分かり、患者の家族である私はとても嬉しく、
ありがたいです。
≪引用ここまで≫
我々も人間なので、限られた時間で大勢の患者さんをみなければ
ならないという制約の中で、流れ作業的になる面もあるのは確かです。
特に外来診療はそうなりがちなので、心苦しいところです。
しかし、我々の仕事の目的は利潤をあげることではなく
患者さんを治療をすることなので、患者さんが良くなることを
第一に考えるのは間違いありません。
今の世の中、家族が食べていくので精一杯という人達がたくさん
いらっしゃる中で、決して贅沢ができるというわけではありませんが
生活を考えずに、やりがいを持って仕事に取り組めるということは、
とてもありがたいことだと思います。
また、日々臨床に取り組む中で、困っている方から直接感謝される
ということも、辛い仕事を続けていけるモチベーションとなっている
ことも確かです。
我々医師は、飛行機でいえばパイロット、オーケストラでいえば指揮者ですが
現代の医療は、チームとして行われているものです。
飛行機を整備する人、baggage claimのターンテーブルの奥でスーツケースを並べる人
などと同じように、病院にもたくさんの縁の下の力持ちが働いています。
病院食を準備してくれる人、病院で事務作業をしている人、
我々医師に最新の医療情報を伝えてくれる人(MRさん)、
医局でいろいろな作業をしてくれる人たちなどなど。
また間接的ではありますが、医薬品の研究をしている人や、
病院に電気を安定供給してくれる人たちだってとても大事な
役割を担っていると思います。
(慶應病院の入り口の花屋さんの下あたりに大きな変電所があり
ここでも、目に見えないけれど、活躍している人達がいます)
そのような人たちへの感謝の気持ちも忘れてはいけないと思うし
社会を支える様々なお仕事の人たちもプライドをもって仕事に取り組んで
欲しいなと思います。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062165767.html
を読んで下さったとのことで、その感想をお知らせいただきました。
ご尊父様が当院で胃切除を受けられたそうです。
≪以下引用≫
先生達は沢山の患者さんに手術をしているので、流れ作業のように
手術をこなしているだけかと思いましたが、「休日でもいつも患者さんが
気になる」等々を読んで、患者さんに対して先生達はそこまで親身に
思ってくださっているのだと分かり、患者の家族である私はとても嬉しく、
ありがたいです。
≪引用ここまで≫
我々も人間なので、限られた時間で大勢の患者さんをみなければ
ならないという制約の中で、流れ作業的になる面もあるのは確かです。
特に外来診療はそうなりがちなので、心苦しいところです。
しかし、我々の仕事の目的は利潤をあげることではなく
患者さんを治療をすることなので、患者さんが良くなることを
第一に考えるのは間違いありません。
今の世の中、家族が食べていくので精一杯という人達がたくさん
いらっしゃる中で、決して贅沢ができるというわけではありませんが
生活を考えずに、やりがいを持って仕事に取り組めるということは、
とてもありがたいことだと思います。
また、日々臨床に取り組む中で、困っている方から直接感謝される
ということも、辛い仕事を続けていけるモチベーションとなっている
ことも確かです。
我々医師は、飛行機でいえばパイロット、オーケストラでいえば指揮者ですが
現代の医療は、チームとして行われているものです。
飛行機を整備する人、baggage claimのターンテーブルの奥でスーツケースを並べる人
などと同じように、病院にもたくさんの縁の下の力持ちが働いています。
病院食を準備してくれる人、病院で事務作業をしている人、
我々医師に最新の医療情報を伝えてくれる人(MRさん)、
医局でいろいろな作業をしてくれる人たちなどなど。
また間接的ではありますが、医薬品の研究をしている人や、
病院に電気を安定供給してくれる人たちだってとても大事な
役割を担っていると思います。
(慶應病院の入り口の花屋さんの下あたりに大きな変電所があり
ここでも、目に見えないけれど、活躍している人達がいます)
そのような人たちへの感謝の気持ちも忘れてはいけないと思うし
社会を支える様々なお仕事の人たちもプライドをもって仕事に取り組んで
欲しいなと思います。
2010年7月22日木曜日
手術の教育の進化
ITの進歩に伴い手術の教育方法も変化してきています。
私が研修医の頃、手術の教育はOJT(on the job training)でした。
上司の手術に助手として入り、患者さんを通してその技術を伝授されるというスタイルです。
そして一定期間たつと、震える手で「はじめての手術」を体験することになるわけです。
また教わる内容も指導者によりまちまちということも当たり前でした。
当然のことながら症例の多い病院と少ない病院で教育効果が違います。
しかし、手術といういわば職人芸を学ぶのですから、やむを得ないことと思っていました。
このような弊害を最小限にするため、若いうちは、いくつかの病院を移って、
いろいろな手技や考え方を身につけるということが行われます。
このような状況は今世紀になり徐々に変わって来ました。
きっかけは、内視鏡外科手術の普及です。これは100年に1度の革命ともいえる変化でした。
内視鏡外科はテレビモニターに映し出された映像をみながら行う手術であるため、
手術映像の記録が容易です。したがってこの新しい手術は、学会などでのビデオ発表を
通して、急速に普及しました。ITの進展とも相まって、よい手術方法は、どんどん
広まっていったのです。新しい手術なので、その教育法にも関心が集まりました。
そこで手術の教育カリキュラムが形成されてきました。
それまでは、指導者について、その人独自のノウハウを学んできたスタイルから
共通のカリキュラムにしたがって効率よく学習するという教育法に変化してきたのです。
ちょうど、初期臨床研修がはじまったことも、この変化を後押ししたと言えます。
また医療における大きな変化がもうひとつあります。
それは、広尾病院や横浜市大の事故を契機にした、医療に対する社会的関心の高まりです。
現代は患者さんで練習するということが許される時代ではなくなってきたのであります。
それではどうやって手術の練習をすればいいのでしょうか。
その答えがシミュレーションです。
一番単純なシミュレーションはボックス・トレーナーです。
これは、プラスチックのケースの中にスポンジなどをおき、内視鏡外科用の鉗子を使って
縫合の練習などを行うものです。一番安価で実用的な練習方法といえます。
しかし、生身の体とはかなり違うので、基本的な技術の習得には有用ですが、
これだけでOKというわけにはいきません。
次によく行われるのが、動物を用いた練習です。
内視鏡外科では、一般にブタを用いたトレーニングが行われます。
この教育効果は極めて高く、若手の教育には必須ともいえます。
しかし費用が高く、動物の命を犠牲にすることから、なるべく最小限にする必要があります。
また動物のトレーニングができる施設は限られており、指導者も受講者も、移動の時間も含めて
多くの時間と労力を必要とすることも欠点です。
献体(死体)を用いた手術教育は、我が国ではほとんど行われませんが、
欧米で広く行われています。人間なのでとてもよい勉強になりますが、
血が出ないということと、安定的な供給がないことが欠点です。
このような問題をクリアするのがVRシミュレーターです。
VRとはvirtual realityの略で、仮想現実と訳されます。
テレビゲームのようなものですが、最近のVRシミュレーターはかなりリアリティが高く
内視鏡外科手術の雰囲気がかなり再現されています。
私が学生の頃は、犬で手術の練習をしました。
医学教育のためとはいえ、かわいそうだなと思ったことを覚えています。
今、私は医学生に、このVRシミュレーターを使って手術を教えています。
命に関わらない分、ゲーム的になり、真剣味に欠ける欠点はありますが、
手術に対する動機づけという点では素晴らしい教育ツールです。
VRシミュレーターの教育で、学生に伝えたいメッセージは、
1.手術は器用である必要はないこと
2.練習すれば必ずうまくなること(learning curveの存在)
3.手術はチームワークであること
4.早くて雑な手術より、遅くても丁寧な手術がいいこと
です。1回5,6名の学生にVRシミュレーターで手術を教えていますが、
このようなことを理解してもらえるように配慮しています。
VRシミュレーターは飛行機の訓練で実用がが進んでいて、
ライセンスの更新では、実機訓練なしでVRシミュレーターのみで合格すると聞いています。
手術のシミュレーターはそこまで進んではいませんが、今後の技術開発によっては
使用範囲が広がるかも知れません。
よりリアルで安価なVRシミュレーターが登場すれば、患者さんや動物に迷惑をかけることなく
立派な外科医を養成できるようになるので、この分野の研究推進が期待されます。
私が研修医の頃、手術の教育はOJT(on the job training)でした。
上司の手術に助手として入り、患者さんを通してその技術を伝授されるというスタイルです。
そして一定期間たつと、震える手で「はじめての手術」を体験することになるわけです。
また教わる内容も指導者によりまちまちということも当たり前でした。
当然のことながら症例の多い病院と少ない病院で教育効果が違います。
しかし、手術といういわば職人芸を学ぶのですから、やむを得ないことと思っていました。
このような弊害を最小限にするため、若いうちは、いくつかの病院を移って、
いろいろな手技や考え方を身につけるということが行われます。
このような状況は今世紀になり徐々に変わって来ました。
きっかけは、内視鏡外科手術の普及です。これは100年に1度の革命ともいえる変化でした。
内視鏡外科はテレビモニターに映し出された映像をみながら行う手術であるため、
手術映像の記録が容易です。したがってこの新しい手術は、学会などでのビデオ発表を
通して、急速に普及しました。ITの進展とも相まって、よい手術方法は、どんどん
広まっていったのです。新しい手術なので、その教育法にも関心が集まりました。
そこで手術の教育カリキュラムが形成されてきました。
それまでは、指導者について、その人独自のノウハウを学んできたスタイルから
共通のカリキュラムにしたがって効率よく学習するという教育法に変化してきたのです。
ちょうど、初期臨床研修がはじまったことも、この変化を後押ししたと言えます。
また医療における大きな変化がもうひとつあります。
それは、広尾病院や横浜市大の事故を契機にした、医療に対する社会的関心の高まりです。
現代は患者さんで練習するということが許される時代ではなくなってきたのであります。
それではどうやって手術の練習をすればいいのでしょうか。
その答えがシミュレーションです。
一番単純なシミュレーションはボックス・トレーナーです。
これは、プラスチックのケースの中にスポンジなどをおき、内視鏡外科用の鉗子を使って
縫合の練習などを行うものです。一番安価で実用的な練習方法といえます。
しかし、生身の体とはかなり違うので、基本的な技術の習得には有用ですが、
これだけでOKというわけにはいきません。
次によく行われるのが、動物を用いた練習です。
内視鏡外科では、一般にブタを用いたトレーニングが行われます。
この教育効果は極めて高く、若手の教育には必須ともいえます。
しかし費用が高く、動物の命を犠牲にすることから、なるべく最小限にする必要があります。
また動物のトレーニングができる施設は限られており、指導者も受講者も、移動の時間も含めて
多くの時間と労力を必要とすることも欠点です。
献体(死体)を用いた手術教育は、我が国ではほとんど行われませんが、
欧米で広く行われています。人間なのでとてもよい勉強になりますが、
血が出ないということと、安定的な供給がないことが欠点です。
このような問題をクリアするのがVRシミュレーターです。
VRとはvirtual realityの略で、仮想現実と訳されます。
テレビゲームのようなものですが、最近のVRシミュレーターはかなりリアリティが高く
内視鏡外科手術の雰囲気がかなり再現されています。
私が学生の頃は、犬で手術の練習をしました。
医学教育のためとはいえ、かわいそうだなと思ったことを覚えています。
今、私は医学生に、このVRシミュレーターを使って手術を教えています。
命に関わらない分、ゲーム的になり、真剣味に欠ける欠点はありますが、
手術に対する動機づけという点では素晴らしい教育ツールです。
VRシミュレーターの教育で、学生に伝えたいメッセージは、
1.手術は器用である必要はないこと
2.練習すれば必ずうまくなること(learning curveの存在)
3.手術はチームワークであること
4.早くて雑な手術より、遅くても丁寧な手術がいいこと
です。1回5,6名の学生にVRシミュレーターで手術を教えていますが、
このようなことを理解してもらえるように配慮しています。
VRシミュレーターは飛行機の訓練で実用がが進んでいて、
ライセンスの更新では、実機訓練なしでVRシミュレーターのみで合格すると聞いています。
手術のシミュレーターはそこまで進んではいませんが、今後の技術開発によっては
使用範囲が広がるかも知れません。
よりリアルで安価なVRシミュレーターが登場すれば、患者さんや動物に迷惑をかけることなく
立派な外科医を養成できるようになるので、この分野の研究推進が期待されます。
2010年1月31日日曜日
ネット世界の分断
今日の産経新聞の梅田望夫誌の論評は、多くの示唆を含む内容であった。
梅田氏はこれまで、ウェブの進化を比較的オブティミスティクに捉え、少なからずそれに影響を受けていた私としては、下記の見通しはいまだ解釈しかねている。
(以下、本日の産経新聞1面から引用)
これからのウェブ世界は、こうした欧米の価値観やイデオロギーに強く牽引された「共有地たるグローバルウェブ」(主に英語圏)と、「政治体制や文化・言語圏に閉ざされたローカルウェブ」がせめぎあい、分断されて林立する時代を迎えるのであろう。
http://sankei.jp.msn.com/economy/it/100131/its1001310248000-n1.htm
(引用ここまで)
「ウェブ」と「インターネット」と「ネットワーク技術」は、同義ではないけれど、インターネットが現代のコミュニケーションの中心にあることは明白で、その共有地たるインターネットが米国を中心に運営されているのは、米国とイデオロギーを異とする社会からは不満もあるであろう。
中国のインターネット検閲が大きな問題となっている。中国政府からすれば、国家体制を維持するために、ウェブ上の政府に批判的な通信を制限しようという発想は理解できなくもない。また、中国国内でインターネットが自由にアクセスできないことは、米国がテロリズムを抑え込むために、空港で利用者にさまざまな不便を強いていることと、ある意味で同じなのかもしれない。空港で靴を脱がされたりペットボトルを没収されたりすることはおかしいと、もし他国が異を唱えれば、米国はテロリズムから国民を守るためだと言うであろう。それと同じように、ウェブの検閲は中国政府が一部の反政府分子のテロを抑え込むためだとするであろう。
我々からすれば、生まれたときから民主主義の中にいて、その繁栄を享受しているため、その体制に何ら疑問を感じないが、世界に目を向ければ、その価値観は普遍的とはいえない。もし13億人の中国国民が、われわれと同様の民主主義を望んでいるのであれば、当局がどんなに規制をしようと、抑えきれるものではないだろう。それは、ベルリンの壁がなくなった歴史からも明らかである。
インターネットは、西欧諸国の繁栄と表裏一体に、その中心的な位置づけを獲得したのであろう。しかし、今後、西欧諸国の成長が頭打ちになる一方で、中国やインドが高度成長を果たし、経済的覇権が進めば、第2、第3のインターネットが発生することもあるかも知れない。そのネットワークで、安くて品質の良いものが手に入るのであれば、世界中の消費者は新たなネットワークに接続するだろう。グローバリズムは経済力の相対的な価値のバランスの上に成り立っているのではないだろうか。
梅田氏は論説を「グーグル中国問題は、そんな21世紀のウェブ進化のひとつの方向性を示唆するものである。」と結んでいる。ネット世界の分断しうる方向性に対して、米国政府が台湾に武器を輸出し、溝をさらに深めるような決定を下すことには、違和感を感じる。グローバル化の進展において、価値の多様性を認めることこそが分断を防ぐ重要な一歩であり、中国のネット検閲もある程度容認すべきであろう。もちろんサイバー攻撃のような犯罪行為には断固抗議すべきであるが、武力的緊張を高めるのは無益である。
中国当局の検閲問題は、それを批判せずとも、しかるべきネットワーク技術の開発により自由に通信できるインフラを提供すれば済む話である。グーグルの技術と資金があれば、そんなことはたやすいことではないかと思うのだが。
梅田氏はこれまで、ウェブの進化を比較的オブティミスティクに捉え、少なからずそれに影響を受けていた私としては、下記の見通しはいまだ解釈しかねている。
(以下、本日の産経新聞1面から引用)
これからのウェブ世界は、こうした欧米の価値観やイデオロギーに強く牽引された「共有地たるグローバルウェブ」(主に英語圏)と、「政治体制や文化・言語圏に閉ざされたローカルウェブ」がせめぎあい、分断されて林立する時代を迎えるのであろう。
http://sankei.jp.msn.com/economy/it/100131/its1001310248000-n1.htm
(引用ここまで)
「ウェブ」と「インターネット」と「ネットワーク技術」は、同義ではないけれど、インターネットが現代のコミュニケーションの中心にあることは明白で、その共有地たるインターネットが米国を中心に運営されているのは、米国とイデオロギーを異とする社会からは不満もあるであろう。
中国のインターネット検閲が大きな問題となっている。中国政府からすれば、国家体制を維持するために、ウェブ上の政府に批判的な通信を制限しようという発想は理解できなくもない。また、中国国内でインターネットが自由にアクセスできないことは、米国がテロリズムを抑え込むために、空港で利用者にさまざまな不便を強いていることと、ある意味で同じなのかもしれない。空港で靴を脱がされたりペットボトルを没収されたりすることはおかしいと、もし他国が異を唱えれば、米国はテロリズムから国民を守るためだと言うであろう。それと同じように、ウェブの検閲は中国政府が一部の反政府分子のテロを抑え込むためだとするであろう。
我々からすれば、生まれたときから民主主義の中にいて、その繁栄を享受しているため、その体制に何ら疑問を感じないが、世界に目を向ければ、その価値観は普遍的とはいえない。もし13億人の中国国民が、われわれと同様の民主主義を望んでいるのであれば、当局がどんなに規制をしようと、抑えきれるものではないだろう。それは、ベルリンの壁がなくなった歴史からも明らかである。
インターネットは、西欧諸国の繁栄と表裏一体に、その中心的な位置づけを獲得したのであろう。しかし、今後、西欧諸国の成長が頭打ちになる一方で、中国やインドが高度成長を果たし、経済的覇権が進めば、第2、第3のインターネットが発生することもあるかも知れない。そのネットワークで、安くて品質の良いものが手に入るのであれば、世界中の消費者は新たなネットワークに接続するだろう。グローバリズムは経済力の相対的な価値のバランスの上に成り立っているのではないだろうか。
梅田氏は論説を「グーグル中国問題は、そんな21世紀のウェブ進化のひとつの方向性を示唆するものである。」と結んでいる。ネット世界の分断しうる方向性に対して、米国政府が台湾に武器を輸出し、溝をさらに深めるような決定を下すことには、違和感を感じる。グローバル化の進展において、価値の多様性を認めることこそが分断を防ぐ重要な一歩であり、中国のネット検閲もある程度容認すべきであろう。もちろんサイバー攻撃のような犯罪行為には断固抗議すべきであるが、武力的緊張を高めるのは無益である。
中国当局の検閲問題は、それを批判せずとも、しかるべきネットワーク技術の開発により自由に通信できるインフラを提供すれば済む話である。グーグルの技術と資金があれば、そんなことはたやすいことではないかと思うのだが。
2009年11月26日木曜日
リヒテンシュタイン法(Lichtenstein)
私が研修医の頃、鼠径ヘルニアの術式は、組織と組織を縫い合わせて穴をふさぐ手術が主流でした。マックベイ(McVay)法、マーシー(Marcy)法などです。(実はこの時代、既に欧米ではメッシュが広く用いられていましたが)。しかしながら現在では多くの外科医がメッシュを用いた術式を採用し、もはや標準的治療として位置づけられています。
近年、医療の各分野においてエビデンスに基づいて作成されたガイドラインが公表され、標準的な治療法が広く行われるようになりました。鼠径ヘルニアは各外科医のこだわりがあり、また術式による治療成績も大きく異なることはないため、ガイドライン作成は困難だろうと言われてきました。一方でエビデンスも少なからず存在する領域でもあり、ガイドラインの必要性は以前より提唱されていました。
我が国では、日本内視鏡外科学会で内視鏡外科手術のガイドライン(http://www.kanehara-shuppan.co.jp/catalog/detail.html?isbn=9784307202459)がまとめられ、昨年公開されました。私は「鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡手術のガイドライン」の作成メンバーに加えていただき、この分野の勉強をさせていただきました。しかし、鼠径ヘルニア手術において腹腔鏡手術は、メジャーな術式とはいえず、あまりインパクトのあるガイドラインとはなりませんでした。
しかし、今年の9月、EHS(the European Hernia Society)より鼠径ヘルニアの診療ガイドラインが発表され、ヘルニアの専門家の間で大きく注目されています。ダウンロード(https://www.herniaweb.org/library/downloads.php)。ヘルニア診療についてさまざまな面から記載されていますが、注目すべきはLichtenstein法が推奨されている点です。Lichtenstein法は我が国ではほとんど行われていませんが、アメリカでは約3割、ヨーロッパでは約6割の症例で行われている、優れた術式です。我が国では1990年代半ばまで、組織と組織を縫合する術式が主流でしたが、欧米ではこのLichtenstein法が普及しつつある時期でした。1990年代後半になり、メッシュのメーカー主導で、メッシュプラグ法やPHS法が普及するようになり、日本ではLichtenstein法が抜け落ちた形で、メッシュによる術式が広まるという特異な形となりました。私自身も、その風潮に押されるようにさまざまな術式を取り入れてきました。メッシュプラグ法やPHS法以降も、クーゲル法、3D-P法、ダイレクト・クーゲル法など、多くの術式を試してきましたが、1年半ほど前からはLichtenstein法を取り入れています。欧米で広く行われているということだけではなく、日産多摩川病院の中島院長(元・日本ヘルニア学会会長)のLichtenstein法が素晴らしい治療成績を上げていたことにも影響されました。実際やってみると患者さんの術後経過はとてもよいと実感されます。またクーゲルやPHSのように腹膜前腔に侵襲を加えなくてもよい治療成績が得られることも魅力の一つです。今回、Lichtenstein法が思いがけずガイドラインで推奨されたことから、今後、我が国でもLichtenstein派が増えるのではないかと期待しています。
日本ヘルニア学会では、我が国独自のガイドラインを作成することが決まりました。私も作成メンバーに加えていただきましたので、国民の皆様によりよい医療を提供できるように、学会で力を合わせて頑張りたいと思います。
近年、医療の各分野においてエビデンスに基づいて作成されたガイドラインが公表され、標準的な治療法が広く行われるようになりました。鼠径ヘルニアは各外科医のこだわりがあり、また術式による治療成績も大きく異なることはないため、ガイドライン作成は困難だろうと言われてきました。一方でエビデンスも少なからず存在する領域でもあり、ガイドラインの必要性は以前より提唱されていました。
我が国では、日本内視鏡外科学会で内視鏡外科手術のガイドライン(http://www.kanehara-shuppan.co.jp/catalog/detail.html?isbn=9784307202459)がまとめられ、昨年公開されました。私は「鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡手術のガイドライン」の作成メンバーに加えていただき、この分野の勉強をさせていただきました。しかし、鼠径ヘルニア手術において腹腔鏡手術は、メジャーな術式とはいえず、あまりインパクトのあるガイドラインとはなりませんでした。
しかし、今年の9月、EHS(the European Hernia Society)より鼠径ヘルニアの診療ガイドラインが発表され、ヘルニアの専門家の間で大きく注目されています。ダウンロード(https://www.herniaweb.org/library/downloads.php)。ヘルニア診療についてさまざまな面から記載されていますが、注目すべきはLichtenstein法が推奨されている点です。Lichtenstein法は我が国ではほとんど行われていませんが、アメリカでは約3割、ヨーロッパでは約6割の症例で行われている、優れた術式です。我が国では1990年代半ばまで、組織と組織を縫合する術式が主流でしたが、欧米ではこのLichtenstein法が普及しつつある時期でした。1990年代後半になり、メッシュのメーカー主導で、メッシュプラグ法やPHS法が普及するようになり、日本ではLichtenstein法が抜け落ちた形で、メッシュによる術式が広まるという特異な形となりました。私自身も、その風潮に押されるようにさまざまな術式を取り入れてきました。メッシュプラグ法やPHS法以降も、クーゲル法、3D-P法、ダイレクト・クーゲル法など、多くの術式を試してきましたが、1年半ほど前からはLichtenstein法を取り入れています。欧米で広く行われているということだけではなく、日産多摩川病院の中島院長(元・日本ヘルニア学会会長)のLichtenstein法が素晴らしい治療成績を上げていたことにも影響されました。実際やってみると患者さんの術後経過はとてもよいと実感されます。またクーゲルやPHSのように腹膜前腔に侵襲を加えなくてもよい治療成績が得られることも魅力の一つです。今回、Lichtenstein法が思いがけずガイドラインで推奨されたことから、今後、我が国でもLichtenstein派が増えるのではないかと期待しています。
日本ヘルニア学会では、我が国独自のガイドラインを作成することが決まりました。私も作成メンバーに加えていただきましたので、国民の皆様によりよい医療を提供できるように、学会で力を合わせて頑張りたいと思います。
2009年8月23日日曜日
NOTESについて
NOTESとはNatural Orifice Translumenal Endoscopic Surgeryの略語で、日本語では経管腔的内視鏡手術といいます。
この数年注目されている新しい手術で、体壁に一切傷を作らない夢の手術といえます。
Natural Orificeは口や腟など、本来、人がもっている「くち」(孔といいます)のことです。他に肛門や尿道もあります。TranslumenalはLumen(管腔)をTrans(経る)ということで、消化管などの管を通してお腹の中に達することを意味します。つまり皮膚を切らずに、お腹の中に入り手術を行うのです。
Endoscopic Surgeryは内視鏡手術のことで、目で見て手で触って行う開腹手術に対して、内視鏡の映像を見ながら鉗子などで行う手術のことです。内視鏡手術は従来(といっても20年ぐらいの歴史ですが)、お腹に数か所の穴をあけて、まっすぐな硬い道具を利用して手術を行っていました。
一方、NOTESでは曲がりくねった管腔を通して手術を行うため、柔軟に曲がる細長い道具を使って手術をする必要があります。現状ではまっすぐな道具に比べ機能が限られているため、あまり複雑なことはできません。したがって臨床では、胆嚢や虫垂を切除する手術が一部で行われているのみです。
しかし、技術の進歩により安全に多くのことができるようになれば、さまざまな場面でこの治療法が取り入れられるようになるでしょう。
現在、消化器外科では多くの疾患で腹腔鏡手術が標準治療として位置づけられるようになってきましたが、20年前には、想像もできなかったことです。NOTESは、まさに20年前の腹腔鏡手術といえるでしょう。手術器具や手技の進歩により、いずれは多くの患者さんの治療に応用されるようになるでしょう。
我々はそのような未来像を見据え、NOTESの研究に取り組んでいます。安全で苦痛のない治療を実現するために、この分野の研究推進は重要なのであります。
2009年8月16日日曜日
胃の粘膜下腫瘍について
胃の粘膜下腫瘍(submucosal tumor; SMT)は、胃の正常な粘膜の下にできる腫瘍です。
胃癌は粘膜が腫瘍化するのに対して、粘膜の下の組織(筋肉や血管、神経、脂肪など)が
腫瘍化する点で癌とは異なります。
しかし中には、放置すれば大きくなったり転移したりするものもあり、適切な診断と治療を要します。
最近、粘膜下腫瘍をどのように取り扱うべきかを示したガイドラインができました。
これによれば、2センチ以上のものや、大きくなっているもの、形がいびつなものなどは
詳しく調べた後に手術などの治療を検討することになります。
5センチ以下であれば、腹腔鏡手術という傷の小さな手術が検討されます。
胃の粘膜下腫瘍で、最も多いのが消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor; GIST)と
いうもので、1980年代以前は平滑筋腫あるいは平滑筋肉腫と呼ばれていました。
小さいうちは良性のものが多いのですが、大きくなるにつれ悪性度が増すことが特徴です。
胃にとどまっているものは、手術で切除すれば治ります。
転移した場合には薬物療法が行われますが、根治することは困難と言わざるを得ません。
しかし、上手に薬物治療を行えば腫瘍の増殖を抑えたまま生活することができます。
手術は、一般的に胃の一部を切り取るだけで済むため、術後の食事の心配はあまりありません。
しかしながら、腫瘍の場所や大きさによっては、たくさん胃を切り取る必要もあります。
手術も薬物治療も、経験の多い施設で受けることが重要です。しかし、
GISTは比較的まれな病気であるため、どこの病院でも治療経験が豊富というわけではありません。
当院は、2005年まで勤務されていた故・大谷吉秀先生がSMTやGISTの治療の第一人者で
あったこともあり、豊富な治療経験を有しています。
GIST診療ガイドラインの作成では、同じく当院で長くこの手術をされた故・久保田哲朗先生が
委員長を務め、大谷吉秀先生も委員の一人として参画されていました。
私も若輩ながら、作業のお手伝いをする機会をいただき、この分野の勉強を深めることができたのは
この二人の恩師と、当時、日本癌治療学会理事長をされていた北島政樹名誉教授のご指導の
賜物と思います。
当院では腹腔鏡手術のほかさまざまな縮小手術や機能温存手術に取り組んでいます。
少しでも患者さんの術後の状態がよくなるように、北川雄光教授の指導のもと、教室として
GISTの診断・治療・研究に取り組んでいます。
胃の粘膜下腫瘍やGISTのことで心配なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
ヘルニアについて
ヘルニアと言っても、腰のヘルニアや食道裂孔ヘルニアなどいろいろありますが、
今回お話しするのは、鼠径ヘルニア(鼡径ヘルニア、脱腸)についてです。
鼠径ヘルニアは手術の入門とされ、外科医なら誰でもできる手術です。
したがってヘルニアに専門性があるかというと議論の余地はあるでしょう。
私は「日本ヘルニア学会」という鼠径部ヘルニアと腹壁瘢痕ヘルニアに関する学術団体の
評議員を務めています。学会ではヘルニアに関する専門的な発表を聞いて勉強しています。
そのなかでヘルニアの専門性について感じていることを述べさせていただきます。
まずは治療成績について。
ヘルニアは誰がやっても、大方、治ることは間違いありません。
手術方法もいろいろありますが、どの方法でも大きな差はないと思います。
しかし、頻度は少ないながらも合併症(後出血や感染、その他)や後遺症(慢性疼痛など)、
そして再発のリスクは、医師によって異なります。
これは外科医としての能力差があるというよりは、単に経験の多寡による部分が大きいと言えます。
これを専門用語で surgeon volume とか learning curve というふうに表現します。
手術の結果の良し悪しは、経験数に影響を受けることは科学的に証明されていることです。
その意味において、ヘルニアを専門としている外科医の治療を受けることにはメリットがあるでしょう。
稀な合併症や後遺症、再発のリスクという観点だけではなく、傷の大きさや手術時間、
術中・術後の痛みなど麻酔法に関連することや、入院期間など、手術を受ける全ての患者さんに
関わる事柄についても差があるのではないでしょうか。
また、抗凝固薬(ワーファリンやアスピリンなど血栓を予防するお薬)を内服している患者さんは、
以前は、このような薬を中止して(あるいはヘパリンに変更して)手術をしていましたが、
最近では内服を継続したまま手術を行うことが可能であることがわかってきました。
このことで、血栓症による重篤な合併症(脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓症など)のリスクを上げずに
かつ出血のリスクも特段上げることなく手術が可能であることを検証しています。
このようなヘルニア診療における先進的な取り組みも、ヘルニアを専門としているからこそ
できることであると自負しています。
次に重要なことは教育です。
ヘルニアの手術は、手術の基本手技が多く含まれており、若い外科医に手術を教育する上で
実に多くの材料を提供してくれます。
これは、患者さんを教育の材料にするということではありません。
手術の質を一切下げることなく若手医師の教育を行うことが可能となってくるのであります。
手術の展開上、問題ない場面では、主導権は指導医たる私が握りながら、若い医師に執刀させ、
何か問題があるようなら、直ちに自分が手を出す、というふうな柔軟な手術によりこれが実現できます。
また、指導医が最適な術野を作ることで、手術がやりやすくなるため、経験の浅い医師であっても
上手に手術ができるという面もあるため、むしろ経験のある医師が助手を務めた方が
良い手術となることは、しばしば経験されることであります。
このような教育上の利点も、たくさんの手術を経験することで蓄積されるノウハウといえます。
鼠径ヘルニアの治療を受けるのであれば、症例数の多い施設(または医師)の治療を受けるのが
いいのではないでしょうか。
このことは単に鼠径ヘルニアに限らず、全ての外科系疾患についてもいえることだと思います。
2009年8月15日土曜日
2007年7月16日月曜日
医療と、大海にバケツで水を流し込む意味
本日からここでブログを始めます。
これまで、ウェブで日記的なものをやっていたこともありますが、その意義についてはあまり深く考えていませんでした。
そもそも、情報発信してみても、大海にバケツで水を流し込むようなイメージで、海からの反応が実感できませんでした。
あるいは、悪意をもったユーザの存在という漠然とした不安感もありました。
その点、SNSの方が安心感があり、読者のリアクションを実感できるので、書き込むモチペーションを維持しやすいのですが、閉じた社会ゆえに、何となく閉塞感があり、情報発信の影響力は限定的です。
最近、梅田氏の「ウェブ進化論」を読み大きく考え方を変えました。
ネットの「あちら側」の価値を、あるいはあえて「オープン」にすることの意義を、理解することができました。
実際、この概念が、「こちら側」の“わたし”にとって意味のあることか、やってみなければわかりませんが、まずは始めてみたいと思います。
「新しいもの好き」の“わたし”なので、まずは使ってみる。
しかも使用可能な機能のすべてを徹底的に。
Web 2.0がどれだけ“わたし”の実生活にインパクトを与えるものなのか考えたい。
「ウェブ進化論」を読んで感じたことは、医療はまさに long-tail なサービスだということです。
ある医師がどんなに優れていても、治療できる患者の数には限りがあります。
評判のいい外科医のところには、当然患者が集まります。
でも、どんなに患者が集まっても、手術できる数には限りがあります。
週に4件のmajor surgeryをしたとして、年間に200件、外科医の生涯を30年とすると、5000件です。
もっと頑張ったとしても、せいぜい1万件でしょう。
マスを対象に商品やサービスを提供する分野とはだいぶ違うようです。
しかも、名医というのは、誰にとっても名医ではない、という現実があります。
もちろん医師の専門分野と患者さんの疾患の組み合わせもありますし、基本的に人間対人間の関わりが大きく関与するので、性格的な問題も無視できません。
たとえば、病気のことを簡潔にはっきりと言ってほしい人、オブラートに包んでやわらかく言ってほしい人など、求めるものは人それぞれです。
当然、地理的な問題も重要です。
多数にとっても名医よりも、自分にとっての名医が重要であることは言うまでもありません。
そこのマッチングをするのは、容易ではないでしょう。
少なくとも、現在のテクノロジーとコンテンツでは実現できないでしょう。
そこで、web 2.0に期待がかかります。
医師の評判をオープンにすれば、恐らく批判が続出するでしょう。
玉石混交の情報の「石」の存在が、医師の権威を下げうることもあるでしょう。
しかし、病気を治したい自分が、「玉」の情報を求めるという欲求はとても大きいので、すなわちニーズがあるので、この分野は今後拡大することは容易に想像がつきます。
レストランの評判を集めたサイト(たとえば、東京レストランガイド http://www.asku.com/rgj/tokyo/)は、私自身もよく利用しますが、とても有用な情報源と言えましょう。
もちろん、何の権威もない感想が書き込まれていて、バイアスも入っていることは承知の上で、店選びの重要な情報となっています。
その評判を読んでいて感じることは、ある人にとっていい店でも、他の人にはまったく異なる評価があるということです。
味を重視するひと、雰囲気にこだわる人、サービスを細かくチェックする人など、さまざまなわけです。
医療でも同じことが言えるでしょう。
もちろん、命に関わることでもあり、レストランと同列には扱えないとは思いますが、「あちら側」にある医師の情報を整理して提示することは、患者さんにとって有益であることは間違いないでしょうし、今後、その空間が拡大することは間違いないでしょう。
であれば、その大海にバケツで水を流し込む意義があることは確実でしょう。
なぜなら、そのバケツ1杯の水を汲み出す患者さんが、どこかにいるはずで、それをつなぐテクノロジーが進歩してきているのだから
これまで、ウェブで日記的なものをやっていたこともありますが、その意義についてはあまり深く考えていませんでした。
そもそも、情報発信してみても、大海にバケツで水を流し込むようなイメージで、海からの反応が実感できませんでした。
あるいは、悪意をもったユーザの存在という漠然とした不安感もありました。
その点、SNSの方が安心感があり、読者のリアクションを実感できるので、書き込むモチペーションを維持しやすいのですが、閉じた社会ゆえに、何となく閉塞感があり、情報発信の影響力は限定的です。
最近、梅田氏の「ウェブ進化論」を読み大きく考え方を変えました。
ネットの「あちら側」の価値を、あるいはあえて「オープン」にすることの意義を、理解することができました。
実際、この概念が、「こちら側」の“わたし”にとって意味のあることか、やってみなければわかりませんが、まずは始めてみたいと思います。
「新しいもの好き」の“わたし”なので、まずは使ってみる。
しかも使用可能な機能のすべてを徹底的に。
Web 2.0がどれだけ“わたし”の実生活にインパクトを与えるものなのか考えたい。
「ウェブ進化論」を読んで感じたことは、医療はまさに long-tail なサービスだということです。
ある医師がどんなに優れていても、治療できる患者の数には限りがあります。
評判のいい外科医のところには、当然患者が集まります。
でも、どんなに患者が集まっても、手術できる数には限りがあります。
週に4件のmajor surgeryをしたとして、年間に200件、外科医の生涯を30年とすると、5000件です。
もっと頑張ったとしても、せいぜい1万件でしょう。
マスを対象に商品やサービスを提供する分野とはだいぶ違うようです。
しかも、名医というのは、誰にとっても名医ではない、という現実があります。
もちろん医師の専門分野と患者さんの疾患の組み合わせもありますし、基本的に人間対人間の関わりが大きく関与するので、性格的な問題も無視できません。
たとえば、病気のことを簡潔にはっきりと言ってほしい人、オブラートに包んでやわらかく言ってほしい人など、求めるものは人それぞれです。
当然、地理的な問題も重要です。
多数にとっても名医よりも、自分にとっての名医が重要であることは言うまでもありません。
そこのマッチングをするのは、容易ではないでしょう。
少なくとも、現在のテクノロジーとコンテンツでは実現できないでしょう。
そこで、web 2.0に期待がかかります。
医師の評判をオープンにすれば、恐らく批判が続出するでしょう。
玉石混交の情報の「石」の存在が、医師の権威を下げうることもあるでしょう。
しかし、病気を治したい自分が、「玉」の情報を求めるという欲求はとても大きいので、すなわちニーズがあるので、この分野は今後拡大することは容易に想像がつきます。
レストランの評判を集めたサイト(たとえば、東京レストランガイド http://www.asku.com/rgj/tokyo/)は、私自身もよく利用しますが、とても有用な情報源と言えましょう。
もちろん、何の権威もない感想が書き込まれていて、バイアスも入っていることは承知の上で、店選びの重要な情報となっています。
その評判を読んでいて感じることは、ある人にとっていい店でも、他の人にはまったく異なる評価があるということです。
味を重視するひと、雰囲気にこだわる人、サービスを細かくチェックする人など、さまざまなわけです。
医療でも同じことが言えるでしょう。
もちろん、命に関わることでもあり、レストランと同列には扱えないとは思いますが、「あちら側」にある医師の情報を整理して提示することは、患者さんにとって有益であることは間違いないでしょうし、今後、その空間が拡大することは間違いないでしょう。
であれば、その大海にバケツで水を流し込む意義があることは確実でしょう。
なぜなら、そのバケツ1杯の水を汲み出す患者さんが、どこかにいるはずで、それをつなぐテクノロジーが進歩してきているのだから
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