2009年8月23日日曜日

NOTESについて

NOTESとはNatural Orifice Translumenal Endoscopic Surgeryの略語で、日本語では経管腔的内視鏡手術といいます。
この数年注目されている新しい手術で、体壁に一切傷を作らない夢の手術といえます。
Natural Orificeは口や腟など、本来、人がもっている「くち」(孔といいます)のことです。他に肛門や尿道もあります。TranslumenalはLumen(管腔)をTrans(経る)ということで、消化管などの管を通してお腹の中に達することを意味します。つまり皮膚を切らずに、お腹の中に入り手術を行うのです。
Endoscopic Surgeryは内視鏡手術のことで、目で見て手で触って行う開腹手術に対して、内視鏡の映像を見ながら鉗子などで行う手術のことです。内視鏡手術は従来(といっても20年ぐらいの歴史ですが)、お腹に数か所の穴をあけて、まっすぐな硬い道具を利用して手術を行っていました。
一方、NOTESでは曲がりくねった管腔を通して手術を行うため、柔軟に曲がる細長い道具を使って手術をする必要があります。現状ではまっすぐな道具に比べ機能が限られているため、あまり複雑なことはできません。したがって臨床では、胆嚢や虫垂を切除する手術が一部で行われているのみです。
しかし、技術の進歩により安全に多くのことができるようになれば、さまざまな場面でこの治療法が取り入れられるようになるでしょう。
現在、消化器外科では多くの疾患で腹腔鏡手術が標準治療として位置づけられるようになってきましたが、20年前には、想像もできなかったことです。NOTESは、まさに20年前の腹腔鏡手術といえるでしょう。手術器具や手技の進歩により、いずれは多くの患者さんの治療に応用されるようになるでしょう。
我々はそのような未来像を見据え、NOTESの研究に取り組んでいます。安全で苦痛のない治療を実現するために、この分野の研究推進は重要なのであります。

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