2011年5月29日日曜日

鼡径ヘルニアの治療方針

最近の鼠径ヘルニアに対する治療方針をご紹介します。

この3年ほどはLichtenstein法を中心に200例以上の患者さんに手術をしてきました。
その治療成績はとてもよく、今後もLichtenstein法を続けていきます。

今年の1月からは新しい手術方法を取り入れています。
それは腹腔鏡による鼠径ヘルニアの手術です。
TEP(Totally extraperitoneal (TEP) endoscopic hernia repair)という方法です。
現在は両側鼠径ヘルニアの患者さんに限定して行っています。
この手術のメリットは下腹部の真ん中の3センチのキズだけで
両側のヘルニアが手術できるということです。
しかも麻酔法は局所麻酔で、ご高齢の型でも安心して手術が受けられます。
既に10数例の患者さんに手術を行いましたが、みなさん経過は順調であり、
徐々に適応を広げていくことを考えています。

NOTES実施!

5月16日のブログでNOTESのご案内をいたしました。
早速、この新しい手術を行う機会があり、無事成功しすることができました。
おへそに5ミリと2ミリの細い管(トロッカー)を遠し、腟には12ミリのトロッカーを1本おいて、
虫垂を切除する手術(俗にいう盲腸の手術)を行ったのです。
おへそには細い管を2本おいただけなので、キズはほとんどわかりません。
切除した虫垂は腟から取り出しました。
おへその痛みは、通常の単孔式手術に比べ格段に少なく、
硬膜外麻酔なしでも痛み止めは必要ありませんでした。
また腟にはまったく痛みを感じないとのことでした。
患者さんにとって予想以上のメリットがあると実感できる結果となりました。
今後、患者さんとよくお話ししてご理解が得られたら、さらに症例を重ねていきたいと思います。
もちろんSafety First(安全第一)でいくという基本だけは崩さずにいきます。

2011年5月16日月曜日

NOTESをご希望の患者さんへ

NOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)という新しい画期的な手術のご紹介を以前このブログにご紹介しました。
http://wada-md.blogspot.com/2009/08/notes.html
私たちはこれまで動物を用いた研究でNOTESの安全性と有用性を確認してきました。
また最近ドイツでは、腟とおへその両方から手術を器具を挿入する術式が開発され、既に1000例以上の患者さんで実施されています。
そこで我々もこのドイツの術式に準じた手術方法を採用することにして準備を進めています。
既に当院産婦人科と共同の手術で、同様の手術に成功しています。
この度、当院の倫理委員会の承認がおりましたので、いよいよ患者さんの同意が得られれば、この新しい手術を実施したいと考えています。

患者さんのメリットは、体表に傷がないことです。
現在、単孔式内視鏡外科手術という、おへそだけの傷で手術を行う方法が広く行われていますが、臍部に2~3センチの傷ができるため、臍部の変形や若干のキズのはみ出しが懸念されます。
しかし、今回我々が行う術式はおへそに5mmの管を2本差し込むだけなので、さらに傷は目立たず、痛みも軽減することが期待されます。
なぜ傷が小さくてすむかというと、腟から臓器を摘出するからです。
腟の傷は、当然のことながら体表から見えません。また皮膚に比べて痛みが少ないとされます。
これは患者さんにとって大きなメリットになるといえます。

将来的には適応範囲を広げていくことも検討していますが、現在、対象とする患者さんは、閉経後の女性に限っています。
対象となる疾患は、
・胆石症や胆のうポリープに対する腹腔鏡下胆嚢摘出術
・胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下胃局所切除術
・急性虫垂炎に対する腹腔鏡下虫垂切除術
・腹腔内疾患に対する腹腔鏡下臓器生検
・その他の腹部疾患に対する比較的容易な腹腔鏡下手術
としています。
この術式について詳しくお知りになりたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。