2011年6月3日金曜日

メディカル テクノロジーEXPO

2011年6月23日に、メディカル テクノロジーEXPOで講演をすることになりました。
http://www.medi-techno.jp/ja/seminar/04/
医療機器開発にかかわる人たちに、医療現場のニーズを伝えられたらと思います。
日本の、ものつくりのスピリットが、患者さんの治療に役立てば意義深いことだと思います。

2011年5月29日日曜日

鼡径ヘルニアの治療方針

最近の鼠径ヘルニアに対する治療方針をご紹介します。

この3年ほどはLichtenstein法を中心に200例以上の患者さんに手術をしてきました。
その治療成績はとてもよく、今後もLichtenstein法を続けていきます。

今年の1月からは新しい手術方法を取り入れています。
それは腹腔鏡による鼠径ヘルニアの手術です。
TEP(Totally extraperitoneal (TEP) endoscopic hernia repair)という方法です。
現在は両側鼠径ヘルニアの患者さんに限定して行っています。
この手術のメリットは下腹部の真ん中の3センチのキズだけで
両側のヘルニアが手術できるということです。
しかも麻酔法は局所麻酔で、ご高齢の型でも安心して手術が受けられます。
既に10数例の患者さんに手術を行いましたが、みなさん経過は順調であり、
徐々に適応を広げていくことを考えています。

NOTES実施!

5月16日のブログでNOTESのご案内をいたしました。
早速、この新しい手術を行う機会があり、無事成功しすることができました。
おへそに5ミリと2ミリの細い管(トロッカー)を遠し、腟には12ミリのトロッカーを1本おいて、
虫垂を切除する手術(俗にいう盲腸の手術)を行ったのです。
おへそには細い管を2本おいただけなので、キズはほとんどわかりません。
切除した虫垂は腟から取り出しました。
おへその痛みは、通常の単孔式手術に比べ格段に少なく、
硬膜外麻酔なしでも痛み止めは必要ありませんでした。
また腟にはまったく痛みを感じないとのことでした。
患者さんにとって予想以上のメリットがあると実感できる結果となりました。
今後、患者さんとよくお話ししてご理解が得られたら、さらに症例を重ねていきたいと思います。
もちろんSafety First(安全第一)でいくという基本だけは崩さずにいきます。

2011年5月16日月曜日

NOTESをご希望の患者さんへ

NOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)という新しい画期的な手術のご紹介を以前このブログにご紹介しました。
http://wada-md.blogspot.com/2009/08/notes.html
私たちはこれまで動物を用いた研究でNOTESの安全性と有用性を確認してきました。
また最近ドイツでは、腟とおへその両方から手術を器具を挿入する術式が開発され、既に1000例以上の患者さんで実施されています。
そこで我々もこのドイツの術式に準じた手術方法を採用することにして準備を進めています。
既に当院産婦人科と共同の手術で、同様の手術に成功しています。
この度、当院の倫理委員会の承認がおりましたので、いよいよ患者さんの同意が得られれば、この新しい手術を実施したいと考えています。

患者さんのメリットは、体表に傷がないことです。
現在、単孔式内視鏡外科手術という、おへそだけの傷で手術を行う方法が広く行われていますが、臍部に2~3センチの傷ができるため、臍部の変形や若干のキズのはみ出しが懸念されます。
しかし、今回我々が行う術式はおへそに5mmの管を2本差し込むだけなので、さらに傷は目立たず、痛みも軽減することが期待されます。
なぜ傷が小さくてすむかというと、腟から臓器を摘出するからです。
腟の傷は、当然のことながら体表から見えません。また皮膚に比べて痛みが少ないとされます。
これは患者さんにとって大きなメリットになるといえます。

将来的には適応範囲を広げていくことも検討していますが、現在、対象とする患者さんは、閉経後の女性に限っています。
対象となる疾患は、
・胆石症や胆のうポリープに対する腹腔鏡下胆嚢摘出術
・胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下胃局所切除術
・急性虫垂炎に対する腹腔鏡下虫垂切除術
・腹腔内疾患に対する腹腔鏡下臓器生検
・その他の腹部疾患に対する比較的容易な腹腔鏡下手術
としています。
この術式について詳しくお知りになりたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。

2011年3月6日日曜日

患者さんのご家族からメール

「きみが外科医になる日」
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062165767.html
を読んで下さったとのことで、その感想をお知らせいただきました。

ご尊父様が当院で胃切除を受けられたそうです。

≪以下引用≫
先生達は沢山の患者さんに手術をしているので、流れ作業のように
手術をこなしているだけかと思いましたが、「休日でもいつも患者さんが
気になる」等々を読んで、患者さんに対して先生達はそこまで親身に
思ってくださっているのだと分かり、患者の家族である私はとても嬉しく、
ありがたいです。
≪引用ここまで≫

我々も人間なので、限られた時間で大勢の患者さんをみなければ
ならないという制約の中で、流れ作業的になる面もあるのは確かです。
特に外来診療はそうなりがちなので、心苦しいところです。
しかし、我々の仕事の目的は利潤をあげることではなく
患者さんを治療をすることなので、患者さんが良くなることを
第一に考えるのは間違いありません。

今の世の中、家族が食べていくので精一杯という人達がたくさん
いらっしゃる中で、決して贅沢ができるというわけではありませんが
生活を考えずに、やりがいを持って仕事に取り組めるということは、
とてもありがたいことだと思います。
また、日々臨床に取り組む中で、困っている方から直接感謝される
ということも、辛い仕事を続けていけるモチベーションとなっている
ことも確かです。

我々医師は、飛行機でいえばパイロット、オーケストラでいえば指揮者ですが
現代の医療は、チームとして行われているものです。
飛行機を整備する人、baggage claimのターンテーブルの奥でスーツケースを並べる人
などと同じように、病院にもたくさんの縁の下の力持ちが働いています。
病院食を準備してくれる人、病院で事務作業をしている人、
我々医師に最新の医療情報を伝えてくれる人(MRさん)、
医局でいろいろな作業をしてくれる人たちなどなど。
また間接的ではありますが、医薬品の研究をしている人や、
病院に電気を安定供給してくれる人たちだってとても大事な
役割を担っていると思います。
(慶應病院の入り口の花屋さんの下あたりに大きな変電所があり
ここでも、目に見えないけれど、活躍している人達がいます)

そのような人たちへの感謝の気持ちも忘れてはいけないと思うし
社会を支える様々なお仕事の人たちもプライドをもって仕事に取り組んで
欲しいなと思います。